還っていくもの(ボツ作品) 

 昼間になんとなく書きたいと思っていた話なんですけど、プロットもロクに作らずライブ感だけで筆を進めていった結果、物語が破綻してしまったのでとりあえずボツにしました。テーマは海岸です。

海岸は海と大地の境界線でありいわば玄関のような場所です。

生物のルーツは海から來たりた者たちでした。ならば私たちが還っていくのは土ではなく本来海なのではないでしょうか?そういう思いから何となくで書き始めたんですがいい感じの着地点が見当たらないので一応ボツとして放流しておきます。

 

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「還っていくものたち」

 

 

━この海岸線の始まりはどこだったのだろう?そして、これはどこまで続いているんだろう?私の目の前に広がる海と同じようにこの海岸線にも果てはないのだろう、きっと。

 

 

 

そして願わくばこの夢にも終わりがありませんように。

 

 

 

 

 女は何かを悟ったような身振りをすると海から視線を外しスウェットのポケットの中にある数本のタバコのうちの一本を口にくわえて火をつけた。

澄んだ海の空気と一緒に煙を吸い込むと何故だか、一瞬だけ目の前の風景と一つになれた気がした。

そういえばどうしてここに来たんだっけ?思い出そうとすればするほど自分に起きた出来事の理解が及ばなくなるのが分かる。昨晩、残業を終えて家に帰った女はクタクタの身体を引きづりながら洗面所に行き、そこで化粧を落とし、そのまま寝室のベッドに行き深い眠りについた。

 ここまではいい。いつもならAM7:00に設定したアラームがけたたましい音で女を起こし、彼女の忙しない朝がまた始まるはずだった。

 が、彼女の身に起きたのは予想外の出来事だった。深い眠りから目を覚ますと、彼女は名も知れぬどこかの海岸線にいたのだ。ただ一つ違っていたのは、後ろにも前にも横にも、「果て」が無かったことである。

 女は目を覚ました時に周囲の景色にあっけにとられた。まるでアラビアン童話の砂漠さながらのスケールを誇る砂浜と船の気配一つないどこまで続いていく海に言葉を失った。

 だが同時にその風景にどこか安心感を覚えていたりもした。根拠は分からないが、自分がいるべきところに帰ってこれたような感覚も彼女は覚えたのだ。

 

 

 「どうしようかしらね・・・、でもここにずっといるのもいいかも 

そもそもここは夢?それにしてはあまりにも意識がはっきりとしすぎているような・・・」

 

 女は一人ぼっちの海岸線で一人ポツリと呟いた。そうでもしないと自分の存在を自分ですら認識できなくなりそうだったから。

仕事に追い込まれ、休日のほとんどをねたきりで過ごす彼女にとって普段の生活などとるにたらないものだった。だからこれが夢だとしてもさして醒めたいとも彼女は思わなかった。それはあの忙しなくつまらない現実に戻ることと同義だから。

ならいっそ死ぬまでここにいるのもいいんじゃないか?そもそもこの世界が夢の中だとしたら何をもって死と定義するのだろう?この世界での死、それはすなわちこの夢から覚めてしまうことなのではないか?だとしたら死について考えることはよそう。今はまだこの心地よい波の音とゆるやかな風が流れる何処ともしれない海岸線にしばらく身を置こう。

 

 「ねぇ、お姉さん、あなたはどこから来たの?」

 

 しばらくの間、海を見ながら黄昏ていた女に声をかける者がいた。

それは、10歳くらいのサッカーのユニフォームであろう格好に身を包んだまだあどけなさの残る少年だった

この子は一体だれなのだろう?こんな異常な空間と状況で話かけられたのにも関わらず彼女は不思議と驚かなかった。少年を見た瞬間、彼女の中でこれらの出来事は全てあらかじめ決まっていたことなのだという感覚が芽生えたのだ。

 

 「ここではないどこかからよ」

 

 「それはどこ?」

 

「強いていうなら..."夢の外"からかしら。あなたは?どこから来たの?お父さんかお母さんは?それとも友達と一緒とか?」

 

 「ふーん...、僕はねどこかから来たわけじゃないんだ。ずっとここに居たの。ずっ〜と昔から。」

 

 少年はどこか大人びた、憂を含んだ表情で女に向けてそう返した。

 

「昔から?あなたは何者なの?そしてここはどこなの?急に現れたってことはきっとあなたがこの"夢"のキーパーソンなのでしょう?」

 

「ここがどこかっていうのは言葉で説明するのは難しいね。でもヒントをあげる。

皆んな最期は海へ還っていくんだよ。だからお姉さんもここに呼ばれたの。

"還っていくもの"として。」

 

「"還っていくもの"?」

 

 彼女の中でその言葉に対して大きな疑問が生じた。彼の言葉から察するに私は死者?しかし死者が訪れるのは三途の川では?私がいるここは海岸線だ。この場所には一体どんな意味がある?そしてこの夢ともしれないこの現象は何?

 

「そもそもあなたは何者なの?」

 

「僕はここそのものだよ。"還っていくもの"を送り出す為の、いわば送り人のような存在。」

 

ここまで

 

 

 正直突発的に思い浮かんだ内容にしてはうまく文章化できている方なのではないでしょうか?もっとアウトプットを重ねていきたい所存です。